鑑定評価報酬の見積合せ

 鑑定協会のサイトに「関東財務局からのお知らせ」として掲示されている事柄であるし、鑑定評価業務委託に係わることであるから見過ごしにはできないので、事実だけ掲示しておく。


 鑑定協会サイトに掲示される「関東財務局からの通達」である。
主旨は、国有財産評価を委託するに際して平成18年12月1日より適用される「業者選定方法」に関する通知連絡である。業者の選定方法は評価財産の見込額により二分される。
1.評価財産が高額である場合は企画競争により業者を選定する。
2.評価財産が高額でない場合は複数業者から見積書を徴収し、最低見積業者を選定する。
問題点は二つあるので、その一つは企画競争である。
高額財産評価の企画競争なるモノの中身が不明である。
鑑定評価の企画競争とは一体何を指すのであろうか。今後の先例にもなることであり、鑑定協会として照会し糺すべきは糺す必要があるのではなかろうか。
さらに高額、低額の区分額は如何なる額なのか不明である。
低額財産の鑑定評価委託に際しての見積もり合わせは論外であるが、地価調査を始め郵政事業庁や独立法人等が鑑定業者を選定するに際して競争入札を容認してきた鑑定協会では、今さら如何ともし難いであろう。
地価調査の入札・97・98年任期最後の理事会報告(1999.6.2)
[1] 鑑定評価の自由競争入札(2002/10/24)
[2] 郵政事業庁入札(続)(2002/10/26)
さらに、どうやらことの背景は会計検査院報告に端を発しているようだから、業務委託者(政府機関等)も受託者(鑑定業者)も抵抗できない状況に置かれているといえよう。
この鑑定評価委託業者選定方法が、見積価格競争方式に移行するのは財務局だけに止まるものではなかろう。地価公示も地価調査も固評標宅評価も用対連関係も含めた全ての官公需に波及することを懸念する。
 
 鑑定評価の委託は競争入札や見積合わせ等の価格競争に拠るものではなく、非価格競争による随意契約を採用すべきであると云うのは簡単であるが、現実的には鑑定業界内部の全面的合意を得るのは難しいであろう。
 なぜならば業界において新しい業者の参入が十分に担保されていないからである。全体業務量が右肩上がりに増えている時代ならば新規参入者用のシェアも十分確保できたであろうが、業務量が縮小するゼロサム時代には鑑定業者個々のシェアは固定的にならざるを得ないのである。
 固評標宅評価でも一般の官公需でも実績業者が優先される傾向は顕著であり、新規参加業者にとっては価格競争が実施された方が参入が容易なのである。 そのような状況のなかで随意契約採用を主張してみても、既存業者の既得権擁護と受け取られるのがオチである。

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