夢千代の祈り

先週末から今週初めにかけて、讃岐、備中、因幡、但馬と旅をしてきました。 瀬戸内の島の苺、高松・やまちゃん、鳥取・旧友、湯村・夢千代、浜坂・松葉蟹と続く旅でした。 今年最後の旅なのでしょうが、とても佳い三泊四日の旅でした。 今日からは師走、地価公示に、山場に差し掛かったNSDI-PTの詰めにと、しばらくは気忙しい思いの日々を前にして、今年に思いを残すことのない四日間を過ごすことができたと思っています。  なお、NSDI-PTはGIS-ASP&APIに関連する企画提案募集を開始しております。


11/27早朝、前夜遅くまでというよりも翌朝にかけて、割り当てられた事例を作り終えた茫猿は岐阜羽島駅始発の新幹線に飛び乗り、もう四年も通い慣れた島に向かいました。 宇野から島へ向かうフェリーから眺める瀬戸の海は穏やかで、雲間からこぼれる午前の陽にさざ波が輝いていました。

島で今年から苺栽培に取り組み始めた次男が、日々の忙しさにかまけて片付けもままならない彼の仮住まいを掃除したり、整理したりして、少しでも正月を迎えやすくしてやりたいと思っての島行きでした。 乱雑さが目に余っての親の為すこととはいうものの、収穫を終えたばかりで積み上げてある米袋、預かっている様々な品、整理もならずに積み上げたままの箱、等々の諸々を勝手に右にやり左に動かしたりしたのですから、礼を口にしながらも些か複雑な表情だったのも仕方ないことなのかもしれません。
障子の張り替えで疲れた腰を癒しに覗いたハウスのなかでは、クリスマスの出荷を前に苺が多くの花を付け、幾つかの実は僅かに赤くなっていました。 「後、二週間もすれば食べ放題なのに」とつぶやいた家人は、「全部売り物だから身内といえども苺狩りは有料だよ」と返されていました。


一泊二日、粗食に耐えよく働いた茫猿とパートナーは、翌日の夜は高松に向かい、もう馴染みとなった御坊町の”山ちゃん”で瀬戸の地魚地酒に疲れを癒し、翌朝はまた早くに島に戻り、し残した後片付けを終えてから、この旅の褒美にと但馬・湯村温泉に向かうのです。
13:43岡山発 鳥取着15:33の特急スーパーいなば5号の客となったのですが、鳥取から湯村温泉の最寄り駅浜坂までは近いことから、九月に台風に再会を邪魔された鳥取の旧友に会おうと車中から電話しましたら、折良く彼は在宅で、鳥取駅から湯村温泉までは彼の購入したばかりの華麗な新車で久闊を埋めながら送ってもらいました。 せっかくのカブリオレなのだからと、オープントップで海風に吹かれながらの国道9号ドライブは少し寒いけれども楽しい時間でした。
湯村温泉は浜坂駅から山あいに10キロほど入った、春来川沿いの小さな温泉町ですが、川沿いの荒湯や路地裏に夢千代日記の情景を偲ばせる静かな温泉街です。 TVドラマはもう三十年も前のことですから、その後の夢千代ブームに合わせてのことでしょうが、街並みは綺麗に整えられていて、ドラマの鄙びたイメージは薄められていますが、でも雪でもあればさぞかしと思わせる温泉場でした。 写真は湯けむりの上がる荒湯と川沿いの景色です。 試すことはしませんでしたが、荒湯の前では温泉で茹でることができるようにと、ネットに入れた生卵が売られていました。


そして、憧れの夢千代さんです。 過ぎし若き日は懐かしく、夢千代を前にして、語ることも無し。

町なかにある夢千代館の前には、夢千代日記こ出演されて以後、原爆詩集朗読をライフワークとされている吉永小百合さんの祈りを記念するモニュメントがありました。


温泉旅館経営も楽ではなさそうで、破綻執行手続き中の張り紙がある旅館が荒湯の近くにありました。 茫猿一行が泊まった宿の近くの大型旅館も増築改装後十年程度にしては、駐車場に駐める車が少なく、経営も楽では無さそうでした。
ツアー客が慌ただしく旅だった町中をゆっくりと歩いた後に町民バスに乗って浜坂駅に向かい、駅前の観光案内所で昼食に蟹を食したいのだがと尋ねて教えて頂いたのが、松葉蟹販売店です。

次から次へと観光バスや自家用車で訪れる客が、松葉蟹をはじめとする様々な海産物を求めて行きます。 茫猿は活き松葉蟹二杯入りで10千円~18千円とある色々な箱のなかから一箱を選んで代価を支払い、蟹箱を抱えて階上の食堂へ上がります。 そこで料理手数料や追加の酒や食品代価を払って蟹を堪能しました。 一杯をカニシャブにしてTVのグルメ番組のごとく味わい、一杯を焼きガニでいただきました。 〆はカニシャブスープのなかにホグシ身を入れて雑炊です。 まさに酒はすすむし「マイウー・蟹腹蟹歩き状態」でした。

松葉蟹は2杯入りの箱だけでなく、一箱一杯だけの箱《当然大物で、価格も高額、見回したなかで最高額は確か一杯20千円》や、セイコガニ《コウバコカニともいう雌蟹》、茹で蟹、生け簀の蟹なども売られていました。 これから暮れ、正月が近くなるに連れてさらに高くなるのでしょう。
昼酒に酔うて蟹歩き状態の茫猿は、蟹屋さんを後に浜坂駅へ戻り、山陰線上り各停列車の客となります。 先月は道路から慌ただしく眺めた餘部鉄橋を、今月は浜坂発豊岡行きの、ほとんど徐行速度で通過する普通列車車窓から眺めました。


帰途、浜坂から城崎温泉までは各駅停車、城崎温泉で”特急きのさき”に乗り換えて一路岐阜へ、城崎から新幹線乗り換えの京都まで約三時間はほとんど爆睡状態でした。

『鄙からの発信』定番の蓋シリーズ、先ずは湯村温泉(旧温泉町)

つづいて、浜坂町の蓋。

ところで、湯けむりと蟹ともなれば冬の日本海が一番似合います。 今回の湯村も浜坂も時折は、しぐれ雨が通り過ぎるものの小春日和に恵まれました。 それだけに海は波静かで温泉町のそぞろ歩きも楽でしたが、ひとは欲張りなもので、なればこそ海鳴りの聞こえる真冬にもう一度訪ねて、雪の中に佇む夢千代さんを見たいと思うものです。 如月の頃に三国へ越前ガニを食べに行かないかという、別口のお誘いがありますが、いっそのこと少し足を延ばして浜坂再訪も考えてみたいと思っている今日の茫猿です。

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