情報の開示と共有

【茫猿遠吠・・情報の開示と共有・・03.06.02】
 読者諸兄姉の周り(単位士協会等)では、鑑定評価に関する資料情報の開示と共有はどのように行われていますか。茫猿の身辺における士協会では少しばかり悩ましい状況が発生しています。


 ことの経緯を詳細に語ることは憚られますが、茫猿の周辺では、かねてからGIS(地図情報システム)を利用して、デジタル地図の上に地価公示の他にも幾つかの情報を載せて会員間相互利用を図ってまいりました。
 GISと申しましたが、その内実はビットマップデータ地図の利用であり、GIS本来の利用方法であるベクトルデータ地図の利用には至っておりません。その原因は利用可能或いは利用に耐え得るベクトルデータ地図がたいへん高価であり資金力が伴わないということにあります。
※ビットマップとベクトルデータについては次URL参照。
 http://yougo.ascii24.com/gh/66/006656.html
 http://yougo.ascii24.com/gh/80/008009.html
 発生した悩ましい状況の一つは、この地図システムのより広範な利用に関してであり、もう一つはこの地図情報システムの配布媒体あるいは通信手段に関してであります。
 最初の一項は、当該デジタル地図の上にさらに多くの情報を搭載しようと云う働きかけであります。具体的には取引事例の地図情報を、このシステムで作成し交換することにより、より即時的に情報の開示と共有化を図ろうと云うことです。情報交換した範囲内において、自己を含めて作成された取引事例の分布がモニター上で瞬時に確認できますから、大層便利になります。
 便利になり事例の存在把握も確実になりますから、反対する理由は何もありません。紙資源の節約にもつながることでもあります。その昔、固評標宅データを紙で交換コピー配布しようと云ったら、「それが何になる」と反対されたことを思えば隔世の感があります。
 しかし、ことはそう単純ではありません。情報の開示と共有を進めることに反対する理由はない、理由が無いと云うことが実は問題を複雑にします。
具体的に申しますと、そういった地図情報を作成し交換する裾野は広いほど宜しい訳でして全員参加が望ましいわけです。
 でも、その後に起きるであろう事態は全員参加という訳にはまいりません。
その後とは、出来上がった地図情報の二次的(副次的)利用に関してです。
 作成された膨大な取引事例所在地図情報は初期利用の後に廃棄されるわけではなく、二次三次と副次的に利用が図られてゆくものであり、当然のことでもあります。この副次利用効果が一律的でないのも当然のことであり、結果として作成者の費やした労力と受益者の受ける便益に不均衡状態を招来するであろうと予想されます。
 この作成労力と利用受益の不均衡をいかにして調整したらよいのかが、悩ましいことなのです。
 二つ目の悩ましさは、こういったデータ量が1GBを超えるような情報をどのような媒体に載せて配布するかということ、さらにデータ量が大きくなり、その万が一の漏洩により引き起こされるトラブルも大きくなるであろうと予想されることから、セキュリテイをどのようにして確保するかと云うことにあります。
 茫猿の身辺では20GBの携帯用HDの利用が検討されています。しかし、動画や大量の写真をしばしば配布交換するのであればともかくとして、頻度の小さい情報交換に携帯HDの利用は考え物でしょう。かかる費用も馬鹿になりませんし、セキュリテイにも問題があるでしょう。
 何よりも、秘匿性の高いデータを全ての会員事務所に配布すると云うことの危険性も懸念されます。会員個人々々には信頼がおけても、事務所スタッフもともかくとしても、盗難、そしてパソコンやHDを廃棄処分する際のデータ消去に潜む問題など、悩ましいことばかりです。
 さて、読者諸氏はVPNというものをご存じでしたか?
茫猿は寡聞にして最近まで知りませんでした。
 VPNとは Virtual Private Network といい、「インターネットを経由するにもかかわらず、拠点間を専用線のように相互に接続し、安全な通信を可能にするセキュリティ技術。「仮想専用線」「仮想私設網」などと呼ばれる。
 コストのかかる専用線の代替になる新しいインフラとして、企業を中心に着実に浸透している。VPNを利用した通信を行なうには、接続点にVPN機能を備えた専用装置(以下、VPN装置)が必要だが、最近ではルータやファイアウォールにその機能が含まれるものも多い。(アスキーデジタル辞典より)」だそうです。
※VPNについては、次URLを参照。
 http://yougo.ascii24.com/gh/76/007662.html
 http://yougo.ascii24.com/gh/24/002434.html
 http://www.ocn.ne.jp/business/rental/vpn/index.html
 茫猿の身辺では随分以前より、WANと称するISDN回線による疑似イントラネットを利用しています。それ自体は便利な通信手段であり、コールバックシステムの併用により安全性も非常に高いものがあります。
 しかし、難点は通信速度が遅いことであり、テキストデータの送受信には使えても少し大きなファイル転送には向きません。コールバックに潜む通信コスト負担問題もあります。
 といって光ファイバーなどの専用回線利用は高嶺の花ということで、不便を忍んできたこの数年です。勿論、FDやMOの利用よりは遙かに便利ですし、並行してCybozuというグループウエアも利用していますから、WAN接続会員相互における情報の開示・交換・共有はある程度のレベルに達していると考えています。
※Cybozuについては、次URLを参照。
 http://cybozu.co.jp/products/ag/index.html
 しかし、開示交換共有される情報の質と量が高次大量になれば、次なる媒体または通信手段を検討しなければならないのも、必然です。VPNはその悩みを解消してくれる通信手段になるかもしれないと茫猿は考えています。
 高次多量データを事務局等サーバーのみに搭載しておけば、同じ情報を多数箇所に配布することによる漏洩に対する懸念は著しく減少できるでしょう。
セキュリテイ対策もVPN管理者が万全を期してくれるでしょうから、我々が頭を悩ますことも必要ないでしょう。経費的にも、初期投資を除けば現在のWANシステム等と同等かそれ以下が予想されます。
 VPNは良いことずくめに見えます。でもやはり第一の問題点は解決されません。そのことは、利用量に応じた賦課金徴収という手段で曲がりなりにも解決が可能かもしれませんが、望ましいことには思えません。
 それ以上に悩ましいのは、便利さの追求は安全性と時に背反するということです。もっと悩ましいのは、便利な状況しか知らない新しい会員が増えることにより、システムはもちろんのこと情報に対する価値判断が微妙に異なってきていることにあります。このズレは古参会員の間にある種の違和感を発生させているようにも見受けられます。
 価値ある情報も、水道の蛇口をひねると同じ感覚で簡単に入手できるという状況を、これ以上造り上げるのが本当に良いことなのかどうか、悩みは深いのです。
 以前にこんな文言を載せました。
「多分、茫猿は長閑なゲマインシャフトに暮らし、M氏は喧噪渦巻くゲゼルシャフトに基軸を置かれるのでしょう。しかし、ゲゼルシャフトの論理で、ゲマインシャフトを壟断されるのは、何とも耐え難いものです。」
 今、茫猿は、同じ想いでおります。ゲゼルシャフト的(利益社会的)在り方に違和感を感じながらも、ゲマインシャフト(同志結合社会的)への郷愁に浸ってばかりもいられずという処でしょうか。
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・
茫猿鉄道の工事は着々と進んでいます。今回は高架駅及び駅前広場の工事状況をお届けします。駅の内外装も植栽工事も全てこれからですが。

大変嬉しいお知らせです。
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茫猿頓首九拝  ~\(^_^)/~

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