REA-CENSUS構築

六月半ばより、新スキームサーバがアクセス集中等の原因から不具合を起こしている。地価調査の現場では、新スキーム事例調査ができないだけではなく、地価調査に使用する事例データがサーバから取り出せなかったり、評価員へのデータ配付に安全性が担保できないことなどから、評価員への過重な負担を招くなど一部には混乱を招いたとも聞こえてくる。


しかし、幸いなことに、今回の事件は地価調査業務終盤の六月に入ってから発生しており、地価調査事例の収集については影響を最小限に止めている。これが、地価公示事例収集の最盛期である11月下旬から12月上旬の時期に発生したらと、とても懸念される。これらの当面する課題について、新スキームやネットワーク構築に些かなりとも係わった者として私見を述べてみたいと考えます。
「なお、この私見は局外者が素人考えを述べるものですから、見当違いもあるでしょうが、その点はご容赦下さい。」
「サーバトラブルの原因」
今回のトラブルの原因がアクセス集中から生じたのか、プログラム・バグから生じたものかを知る立場にはいないから詳細が判らないにしても、単なるアクセス集中に基因するとは考えられない。
今6月は通常の行政年度では第1四半期の最終月であるが、2008年地価公示並びに新スキームでは第4四半期の最終月にあたる。次七月は2009年地価公示の始期なのである。新スキーム調査も6月末にてサーバを停止させ、データの整理や評価員名簿の入れ替えなどのメンテナンスが行われる。
6月中旬は、2008年公示評価員にとっては新スキーム事例調査報告入力確定の最終繁忙期となるのである。特に複数評価員が所属する事務所では一斉調査入力がおこなわれるであろうことも推測される。茫猿のような零細事務所では、未調査データを溜めることは非効率であり、さみだれ式に調査を行いデータ入力を行っているが、複数評価員がいてアシスタントスタッフが調査・入力の主力であるところは、さみだれ入力はとても非効率であり、三ヶ月分の一斉調査・入力が効率的であろうとは容易に推測できることである。
そういった事情が重なって、6月中旬の評価員アクセス集中が発生し、サーバトラブルが発生したとみるのが妥当な処であろう。

 なぜ、同じように集中したであろう昨年末には発生しなかったかの理由を考えるのはLogを検討しない限り難しいが、多分評価員の作業慣れに伴う一斉入力が発生したと見るのが妥当なところではなかろうか。

「サーバトラブルの予防」
アクセス集中に伴うサーバトラブルを予防するには、予想される最大アクセスに対応できるサーバ能力を保持すればすむことである。しかし、平均して日に500人くらいかそれ以下が、それもさみだれ的にアクセスすることを想定して構築するシステムと、5000人が同時にアクセスすることを予定して構築するシステムでは、およそ設計思想から違うと云えるのである。
これは通勤時には混雑し昼下がりには閑散とする郊外電車の状況を考えれば理解できるであろう。通勤時以外の時間帯は運行本数を減らすが編成車両数は減らしていない、一日の内に二度も連結車両数を減らしたり増やしたりする煩雑さを避けるためである。それでも、電車は通勤時混雑を前提として運行が計画されている。
サーバシステムにしても、容量を増やし回線を増強複線化するなど冗長化(注.1)に努力し、ロードバランサー(注.2)等の負荷分散装置(注.3)に資金を投じておけば済むことである。でも、その為には多額の資金が必要になる。導入費だけでなくその後の維持管理費も多額になる。財政事情が逼迫する鑑定協会としては安易な資金投下は許されないのである。
「新スキームシステム構築の経緯」
そもそも、この問題について茫猿が二週間以上沈黙してきたのには次のような事情がある。一つは新スキームシステムは国交省が構築して鑑定協会に貸与されて、鑑定協会が維持管理を担っているものである。一義的責任は維持管理を行う鑑定協会にあるが、背景的責任はシステム貸与者にあるとも云えるのである。
茫猿は新スキーム事業構築・試行に当初から係わっていたから、発言を控えていたのであるが、鑑定協会の新スキームシステムWGに諮問されたのは終始ユーザーインターフェースに係わる事項のみであり、システム構築は意見を述べることも許されなかった。許されなかったと云うよりも所管外事項であったのである。それもあって茫猿は鑑定協会独自のネットワーク構築に力を注ぐようになったのである。それがREA-NET構築なのである。当時から茫猿が懸念し注意喚起してきたのは、全国の評価員からアクセスが集中する年末年始に、サーバダウンすることを想定した対策を講じて下さいということであった。
「解決策の提案」
新スキームシステムは公示評価員がサーバにアクセスしてデータ入力を行うというシステムの特性上、今後もトラブル発生は不可避と予想される。というよりも、どのようなシステムであれ100%はあり得ず、トラブル発生は不可避なのである。問題はトラブルを未然に防ぐことであり、トラブル発生を最小限度に押さえることであり、トラブル発生時のリカバリー対策を怠らないことである。
いわば、巨費を投じてより安全且つ安定したシステムを再構築するか、現在稼働しているREA-NETを利用したバイパス並びにバックアップシステムを構築するかと云うことである。
そのような観点から、神戸(社)日本不動産鑑定協会会長、小川同副会長・地価調査委員長、熊沢同常務理事・総務財務委員長並びに役員各位、及び地価公示・地価調査代表幹事並びに幹事各位に、以下の提案を申し上げるのである。
「具体策提案」
茫猿が云えば我田引水と受け取られかねないであろうが、この際はREA-NETの有する安全・廉価な認証システムを活用すべきである。
次いで、新スキームシステムは、一次データの受入とアンケート発送にのみ特化すべきである。
(a)回収されたPDF化アンケートデータは即刻REA-NETサーバに移管する。この際、回収アンケート帳票をPDF化するのではなく、より負荷の小さいTIF化することも検討されてよいであろう。
(b)代表幹事及び分科会幹事は都道府県毎に区分された回収データを評価員に配分し、現況調査を指示する。この配分及び指示はREA-NETを通じて行うが、現行のシステム構成に加えてREA-CENSUS(仮称:不動産取引悉皆調査)とでも称される別動システムで行われるのが望ましい。
(c)評価員は割り当てられた調査担当データをREA-NETサーバより、各自のパソコンにダウンロードして、ブラウザー機能を利用して調査結果を入力する。この間サーバアクセスは一旦切断されている。次いで、入力が完了したら、サーバへ確定結果データを送付すればよいのである。データ入力中、接続が継続する現行システムよりは、データダウンロード時とアップロード時に接続が限定されるから、サーバ負荷は遙かに軽減されるであろう。現在でも、調査担当が指定されたデータをダウンロードして、地価公示支援ソフトにインポートし調査結果入力を行った後、サーバへ戻している評価員も少なくないのであるから、そのエキスポート・インポートをシステム的に行おうというのである。
(d)評価員としても接続時にUSBトークンを抜き差しする手間や抜き差しに伴うトラブルも無くなるからUSBトークン購入の資金負担(注.4)や煩瑣な役務負担が軽減する。何よりも入力時にサーバの重さを感じるストレスが無くなることが大きいのである。
(e)確定三次データは即座に「REA-JIREI-三次データ閲覧システム」に移管されるから、データの利用効率並びに利用便益も飛躍的に向上するのである。つまり、こういうことである、茫猿が調査・入力・確定した三次データは即座に分科会会員や士協会会員に共同利活用されるのである。
(f)ここで、もう一つ重要なことがある。REA-NETといえども前述のように万能ではない。トラブルの発生は当然に予想される。だから、全国一斉・一括のシステム構築は採用すべきではない。この際は都道府県単位にデータサーバシステムを構築し、一個所のトラブルが全国に波及することを避けるべきである。都道府県単位のサーバ構築は、都道府県士協会の独自オプションを可能にするし、士協会管轄エリア外へのデータ流出と云った無用の誤解を生じさせないためにも有効である。

「結論」
神戸(社)日本不動産鑑定協会会長はじめ協会役員各位
以上の具体策は、局外者でかつ素人の提案であります。しかし、ネットワーク構築に携わった者として多少の知識は持っているつもりでもあります。是非とも協会のシステムアドバイザーと相談されて、解決策の早期の実施検討を要請します。
協会財政が逼迫しているのは承知していますが、ことは地価公示並びに地価調査の円滑な運営に資するものであります。地価公示運営の安定のための保険的措置としても、新スキームシステムの評価員への過重負担を軽減するためにも、それほどの多額負担にならないと見積もられるREA-NETを活用したバイパス並びにバックアップシステム構築『REA-CENSUS』を推進して頂きたいと要請するのであります。 何よりも毎年々々のUSBトークン購入負担(注.4)が著しく軽減されることを秤量比較すれば、REA-NETを利用するバイパスシステム構築は遙かに安価なのであります。

(注.1)冗長化(ジョウチョウカ)
最低限必要な量より多めに設備を用意しておき、一部の設備が故障してもサービスを継続して提供できるようにシステムを構築すること。
(注.2)ロードバランサ
外部ネットワークからの要求を一元的に管理し、同等の機能を持つ複数のサーバに要求を転送する装置。
(注.3)負荷分散装置(フカブンサンソウチ)
外部ネットワークからの要求を一元的に管理し、同等の機能を持つ複数のサーバに要求を転送する装置。なるべく多くのサーバに要求を分散して送信し、各サーバが快適な応答速度を保つことを目的としている。
(注.4)USBトークンの現在の単価は承知しないが、試行当時の見積価格は、@14,000前後であった。大量購入するのであるから、@10,000として、公示評価員3000名とすれば、毎年の更新費用総額は3千万円である。新スキームサーバへのアクセスを全廃するわけではないから、全額が節減できる訳ではないにしても、一般評価員は不要とみれば90%程度が節減できる。単年度のUSBトークン節減経費でバイパス・システム『REA-CENSUS』が十二分に構築可能なのである。

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