新スキーム破綻推進委員会

昨日の(2012.11.28)新スキーム改善特別委員会では、あまりの混乱ぶりというか醜態を見るにみかねて、「提出されている議案ともいえない資料について、私案とも叩き台とも云える部分を削除整理して、議案を再提出、さもなければ直ちに散会!!!」と、吠えてしまいましたが、今さらに茫猿老いたりと、吠えてしまったことを後悔しています。

FBで、「明日は新スキーム改善委員会で上京する。 提案されている第二次改善案と閲覧料試案については、既に質問書を提出済みである。 明日は、しばらくのあいだ耳を閉じて、微苦笑を浮かべて、穏やかに座っていたいと思っている。 会議中、心のなかでは新橋や赤羽での心利いた人たちとの宴を思い浮かべていることとしよう。」と書き込んで上京しましたが、何があっても沈黙を守るべきだったと、今さらに駄弁は銅にも値しない、沈黙は金だったと反省しています。

と申しますのも、肝心なことを置き去りにして、議論を終結させてしまったのではと懸念するからです。 そのことは、現状維持曖昧派に塩を送っただけのことではなかったかと、反省するのです。もう少し詳しく説明します。

その1、地価公示法に抵触する畏れ
今さらですが、地価公示法第28条は(秘密を守る義務)を規定しており、地価公示標準地の鑑定評価を行つた不動産鑑定士は、正当な理由がなく、その鑑定評価に際して知ることのできた秘密を漏らしてはならない。と定めています。 この規定には、六月以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処すという罰則規定も設けられています。

その2、日鑑連が自ら定めた指針の形骸化
日鑑連・地価調査委員会は2011.08.23付けの地価公示運用指針第8章1の3にて、「分科会を超えた事例交換は、稀少事例の交換を除き禁止する。」と定めています。

その3、REA-NETに地価公示事例を搭載することの是非
REA-NETに地価公示事例(いわゆる新スキーム四次データ)を搭載するためには、地価公示評価員である日鑑連会員から納品データの写しを提供するよう求めなければなりません。 近々、このこと(公示事例の提供)を求める公式要請文書を発出しようとしているのですが、それは先に述べる二項に照らしてみて、正当な行為と云えるのか、否かを真摯に検討する必要があろうと考えるのです。

その4、国交省の姿勢
課税評価の指標と化した地価公示を現在の規模で維持する必然性は、国交省には無くなっていると考えられます。 地価公示予算の削減額をもって、不動産価格指数を充実し、中古住宅市場の流通市場整備や環境不動産の普及に進もうとしているのであり、折しも地価公示制度のあり方も含めた抜本的検討を行う外部有識者による検討会も稼働しています。日鑑連は2003/08/29に提出したA案(個別物件情報開示)賛成というパブリックコメントの原点に立ち返る時であろうと考えるのです。

その5、法的な制約と行政裁量権
地価公示由来データの目的外利活用等は、地価公示法第24条によって制約されているものであるが、取引価格情報提供制度による調査結果(いわゆる三次データ)は行政行為の結果であり、行政裁量権の範疇にあると考えることができる。

軽々しい地価公示納品データの提供要請文書の発出は、国交省が何度も示している意向に照らして考えれば、不快感を示されたり、二次改善案の否認だけでは済まないのではと懸念するのです。 いつまでも現状を糊塗する曖昧で自らに都合の良い妥協を重ねた改善案の提出を続けていれば、取引情報の所管課(不動産業課や不動産市場整備課)から、取引価格情報調査への関与停止(新スキームからの排除)という最後通牒を突き付けられるのではないかと懸念するのです。

つまり砂糖細工とも云えない、脆い取引価格情報利用のスキームを完全に壊してしまうのではないかと怖れているのです。 誰かが「今の価格情報利用のあり方は、縁故入社のようなものだ。」と、喝破していましたが、まさに隠されている縁故を明るみに出して、混乱を招くということになるのではと怖れるのです。

筆者(茫猿)は、2012.10.15付けにて、下記内容の上申書を提出しています。 この上申書は10.24開催の委員会では話題にもならず無視されましたが、私自身はこの上申書を原点として微動だにしてはならないのだと、今さらですが考えています。

『上申書 2012.10.10』
一、いわゆる新スキーム三次データについて。
三次データは連合会が一元管理し、連合会会員の利活用に提供する。
提供する方法は、安全なネットワークによりオンライン閲覧提供するものである。
閲覧料はアンケート郵送費並びに閲覧システム維持管理費等の実費を限度とする。

二、いわゆる新スキーム四次データについて。
四次データ及び位置図、地形図等の閲覧等利活用について、連合会は関与しない。
ただし、士協会が(公益事業的意義を認める)公的土地評価に関連して四次データの利活用を図るに際しての指針作成や、助言等は行う。

この喩えは執行部に失礼でしょうが、ハーメルンの笛吹に、いつまでも導かれていて良いのだろうかと考えているのです。 日鑑連の運営は政治です、決して学術研究ではないのです。 学術研究であれば結果のみが評価されることなく、研究の過程も評価されるものであり、過程そのものが成果といえる場合もあります。 しかし、政治は結果です。真面目に一生懸命に尽力したからといって、結果を得られなければ評価に値しないのです。

《2012.11.30 追記》
新スキーム改善委員会の隠された目標は「新スキーム破綻推進」にあるのではなかろうかと、疑っています。 改善委員会の構成は日鑑連正副会長(新藤副会長のみ委員ではない)及び全国の地域連絡協議会長と一部士協会会長が大半の構成メンバーです。茫猿他数名は改善企画小委員会当時から引き続き任命されている委員です。 委員会構成の実態は常務理事会といっても過言ではありません。そして委員長は日鑑連会長であり、副委員長はこの二年間、改善委員長として改善協議をリードし、大半の改善案・修正案を起案してきた方です。

11.28委員会でも、終始無言を貫いた方が何名かおられましたが、常務理事は毎月一回程度の頻度で開催されている国交省との意見交換会に出席されています。 つまり、所管庁の意向、示唆というものを熟知されている方々です。 第二次改善案において安全性は担保できても、透明性は向上できないということも承知されているはずです。 閲覧窓口規制の存続や調査実費に同額の士協会財政支援金を加算することの不透明さも熟知されており、それに対して所管庁が不快感を示していると云うことも承知されているはずです。

にも関わらず、二次改善案を可決された真意は何であろうかと疑うのです。なお、何の言い訳にもなりませんが、茫猿は二次改善案も新閲覧料指針にも反対しました。 ただ独りでしたが「反対」と申し上げました。 総てを考え合わせると、正副会長はじめ常務理事会の真意は、新スキームの破綻を現実のものにすることにあるのだと、茫猿は気づいたのです。 依頼者プレッシャー問題に代表されるように、地価公示のあり方検討会設置に示されているように、鑑定評価も地価公示も制度創設以来 半世紀を経て制度疲労を起こしています。 なまじっかな改善策ではどうしようもないほどに疲弊しています。

その現状をつぶさに承知しているからこそ、破綻を招こうとしているのではないでしょうか、荒廃の後にこそ真の再生ができると考えているのではと気づいたのです。いわばカタストロフィーの美学とでも謂えましょう。 カオスの荒野にこそ新しい萌芽が存在するのだということです。 公示由来事例の一般鑑定利用には正当性が存在しない、ただ黙認されているだけという、半世紀続く砂の城を瓦解させてしまうところから、鑑定評価を再生させようという壮大な叙事詩の幕開けに過ぎないのでしょう。

地価公示由来事例を公的土地評価(相評と固評)に利用することには、今後一切の言質を与えないという所管庁の示唆も存在するようです。 「勝手にやれば、その後は知らないよ。」ということです。 我が儘で現実認識の甘い日鑑連が、次年度以降も取引価格情報調査に関与することは容認できないと云う示唆も存在するようです。 滅びの美学なのか、カタストロフィーの先に再生を夢見ているのか、茫猿には判りません。

でも、この二年間の経緯を冷静に、同時にシニカルに振り返ってみれば、結論は「新スキーム破綻推進特別委員会」に落ち着くのです。 二年間もの小田原評定も、事例情報鎖国派や士協会財政優先派との妥協に継ぐ妥協も、お粗末な議案上程も、それら総てがつながって見えてくるのです。 この記事冒頭に「茫猿老いたり」と書きましたが、それを今まで察知できなかった「茫猿のIntelligence能力」の衰えを悟ったということです。 夜明け前が一番暗いとよく申しますが、今は暗闇の真中にいるのでしょう。

庭の隅にこんな秋を見つけた。 塀に伝って伸びた蔦が、身を赤く染めている。

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