健さんが逝った。健さんは茫猿が名前で呼ぶ唯一の俳優だった。
網走番外地や昭和残侠伝の頃の健さんはそれほど好きではなかった。共演する鶴田浩二や池辺良の方が好きだったように記憶する。若い健さんより、陰をにじませる鶴田浩二や池辺良のほうに共感していたように憶い出す。
貧乏な学生時代の茫猿は、健さんや鶴田浩二や藤純子の映画を、三本建てオールナイトの場末の小便臭い映画館で見ていたものである。
健さんが一番好きな俳優になったのは「冬の華《1978年》」だったか、「幸せの黄色いハンカチ《1977年》」だったかは記憶にない。 冬の華で知ったチャイコフスキーのピアノコンチェルトは大好きな曲となった。
鉄道員(ぽっぽや)、居酒屋兆治、あなた など、健さんも佳かったが、なぜか共演した俳優が印象に残っている。「冬の華」では田中邦衛、池辺良、「幸せの黄色いハンカチ」では倍賞千恵子、チョイ役で出てくる渥美清、「ぽっぽや」では大竹しのぶ、小林稔侍、「居酒屋兆治」では加藤登紀子、伊丹十三、「あなた」では田中裕子、大滝秀治などなど、健さんよりも健さんと共演する俳優の方が残っているのは何故だろうと考えている。
健さんの存在感は大きいが、彼の削ぎ落としていながら包み込む演技力は共演者も輝かせているのだろうと思っている。もちろん、共演者の優れた演技力あってのことだろうけれど。 任侠映画から健さんを脱皮させた大きな存在は山田洋次監督だろうと思っている。
今は、健さんの遺作となった珍しい健さんのCMを繰り返し眺めている。<iframe width=”500″ height=”280″ src=”//www.youtube.com/embed/oxw4AaCO-XM” frameborder=”0″ allowfullscreen></iframe>
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