森友学園国有地廉価払下げ事件に関連する不動産鑑定評価書等について、大阪府不動産鑑定士協会が立ち上げた第三者委員会より提出された「調査報告書」が大阪士協会HPに開示されている。この調査報告書を何度も読み込みリンクされている書類等も読み込んで、茫猿は「鄙からの発信」に『森友案件に係る鑑定評価&調査報告』読み解き記事を四件連載した。
意図するところは、モリトモ(C.I.P)勝手連(C.I.P:Client Influence Problem、森友学園CIP問題勝手に読み解き連)である。鄙里の老爺が読み解こうというのも烏滸がましいことであるが、鑑定業界の自浄能力を高め活性化を図ることを願ってのこと故に、各位のご寛恕を賜りたい。
一、依頼者プレッシャーの存在疑念
業界からは10年も前に引退した茫猿ではあるが、鑑定評価への愛着は今も深いものがあると自認している。森友学園国有地廉価払下げ問題を当サイトで扱うには、かつて面識を得た多くの方々が今も大阪会に在籍されており、歯に衣着せぬ書き方もあからさまな書き方も為し難く、隔靴掻痒の思いを抱きながら記している記事である。
然し乍ら、「森友案件に係る鑑定評価書&調査報告書問題」の本質はX、Y鑑定については近畿財務局からの(多分露骨な)依頼者プレッシャーの存在が疑われることにある。Z鑑定については森友学園からの強力な評価条件付与依頼が疑われる。各々、経験豊富練達堪能と思われる不動産鑑定士諸氏が、X、Y、Zそれぞれに幾つかの疑念を抱かせる鑑定評価書を軽々に発行するとは信じ難いのである。
依頼者プレッシャーとは鑑定士協会連合会のHP等によれば「業務を依頼する者が業務依頼を条件にして、「一定の不動産鑑定評価額の要請や誘導及び 妥当性を欠く評価条件の設定」を強要することである。”今風に云えば上から目線でマウンティング”とでも言おうか。
不動産鑑定評価の業務委託は、適正な不動産の鑑定評価を求められている事務委任契約である。にも拘わらず請負契約のように捉えられ、依頼者の満足する鑑定評価額を出せるか出せないかが、業務依頼の前提となっているケースもある。本案件においても、X鑑定依頼とY鑑定依頼は、各々三社による見積合わせにより最低報酬額を提示した鑑定業者に依頼されている。
このような依頼に対応するこは、社会的に求められている鑑定評価の本来の機能と大きく乖離しており、かかる事案に対する国土交通省の指導では、「依頼の謝絶」が要請されているところである。
しかし、個々の鑑定業者・鑑定士が依頼を謝絶したとしても、他の鑑定業者が受託するという鑑定業者間の対応の差異があり、業界全体として見た場合には謝絶したことにならないこと、及び、依頼者側のいわゆる「自らにとって都合のよい鑑定業者探し」を増長させることにより、結果として過度に無理な受託競争を助長させる事態につながっている。”これもモグラ叩きとでも云えようか。”この結果、鑑定評価制度に対する社会からの不信感を招く一端となる。《以上連合会サイトより引用する。一部”・”は茫猿の注釈である。》
鑑定士協会連合会サイトが示すように、依頼者プレッシャーに対応し根絶するためには、鑑定業界が一丸となって対応する以外に無い。同時に、とかく埋もれてしまいがちなこの問題の発生が疑われる度に「情報を広く速やかに開示」してゆくことが大切である。あまり好まない表現であるが「隠せば露顕する」ことを知らしめるのである。
依頼者プレッシャー根絶対策の難しさは、依頼者も受託鑑定業者も依頼者プレッシャーの存在を隠そうとすることである。依頼者が官公庁であれば、適切な鑑定評価業務の遂行が疑われ用地取得行為も官公有地売却行為もその適正さが疑われる。民間であれば、鑑定評価に基づく売買賃貸等経済行為の適正さが疑われることとなる。
受託者である不動産鑑定側にすれば、不適切な評価額の要請や誘導及び 妥当性を欠く評価条件の設定等に安易に応じたこととなる。鑑定業者として或は不動産鑑定士としてその適性が疑われることとなる。
だから、一旦依頼者プレッシャーが介在する不動産鑑定評価が行われたとしても、事後はは依頼者も受託鑑定業者もその介在を否定するのである。殆どのプレッシャーは口頭で為されるものであり、書面で証拠が残されるようなことは無い。全ては漠然とした霧の中の朧な出来事である。
あからさまに異常な価格誘導や評価条件付与であれば、事後に「依頼者プレッシャー」の介在を疑い易いし、不当鑑定として糾弾することもあながち不可能ではない。問題はグレーゾーンである。ストライクゾーンギリギリのボールと云うものが存在する。
不動産の鑑定評価とは、「不動産の価格に関する専門家の判断であり、意見であるといってよいであろう。」と鑑定評価基準が述べることに帰結する。専門家の判断&意見ゾーンについては誰も口出し出来ないのである。がしかし、同時に基準はこうも述べる。「依頼者に対して鑑定評価の結果を分かり易く誠実に説明を行い得るようにするとともに、社会一般に対して、実践活動をもって、不動産の鑑定評価及びその制度に関する理解を深めることにより、不動産の鑑定評価に対する信頼を高めるよう努めること。」
平たく云えば、「依頼者に対しても社会に対しても、明解な説明責任を果たすべし」と云うことであろう。
依頼者プレシャーを受けた不動産鑑定士は「強要されて謝絶し難く」などと言い逃れる。しかし不動産鑑定士が被害者ヅラすることは許されないのである。其処には鑑定評価受託に伴う報酬対価の支払いや、今後も評価依頼が安定的に継続するだろうと云う見返り期待が存在するのである。一方的に被害者であるなどと云うことは無いのである。
『不動産鑑定評価基準』
『公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会』
※『鑑定評価監視委員会規程に基づく依頼者プレッシャー通報制度』
※依頼者プレッシャー通報制度リーフレット
※依頼者プレッシャーに関する調査結果について平成30年度調査結果
次号・モリトモ(大阪士協会)勝手連(2)は「二、依頼者プレッシャーの存在を疑わせる情況証拠」について、検討を加えてみる。 今回の森友学園関連鑑定評価等事件でも、依頼者プレッシャーの存在を示す明らかな証拠は何処にも認められない。いわゆる情況証拠が色濃く指摘されるのである。
如此く考えて、財務局見積合わせに関わる資料をネット検索していたら、以下の資料に出会った。PDF400pを超える資料である。しばらくは、これらの資料を読み解いてみるが眼を痛めないように、ゆっくりと取り掛かることにする。
※公共随契を中心とする 国有財産の管理処分手続き等の … – 財務省(33p)
※概算額の提示方法の明確化 – 財務省(7p)
※参考資料 – 近畿財務局 – 財務省(122p)
(森友学園への国有地売却に関する会計検査結果)
※国有財産の鑑定評価委託業務について – 財務省(235p)
※最近の国有財産行政の課題 – 参議院(15p)
※学校法人森友学園に対する国有地の売却等について – 会計検査院(8p)
※豊中小学校関連応接記録-財務局(4p)
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