五つのK

いわゆる新スキーム改善問題(所掌委員会は新スキーム特別委員会から新スキーム改善特別委員会に名称変更された。2011.07.19常務理事会)は、五つのKに集約されると考える。この五つのKに正しく真正面から向き合い速やかに解決することが求められている。
三月前後の頃に、所管庁から投げかけられたボール(新スキーム改善問題)は、士協会会長会議に示された説明資料のとおりであろう。 今は鑑定協会が速やかにボールを投げ返す時であろうと考える。 組織いじりに時間を費やしているときではないのである。
《この説明資料は何度見ても不愉快である。表紙右肩には常務理事会説明用資料、並びに士協会会長会説明用資料とは記載されているが、理事会は説明対象とされていない。 執行部は定款18条をなんと心得ているのであろうか。実際にも6/21理事会では、完全にスルーされた。》


茫猿は五つのKを次のように考える。
1.国民共有資産(共有:KYOUYUU)
新スキーム即ち「不動産取引価格情報制度」に関わる基礎データは法務省提供データであり、同時に同調査には国費が投ぜられているものである。それらは国民共有資産であることを再確認することから始まる。
2.情報開示要請(開示:KAIJI)
新スキームの背景には、不動産価格情報開示に関わる閣議決定がある。
2004年03月19日付け閣議決定「規制改革・民間開放推進三カ年計画」のなかで「取引価格情報の開示」は重点項目とされている。
3.安全性担保(機密性保持:KIMITU)
新スキームの背景には個人情報保護法が存在する。 重要な個人情報でもある不動産取引価格情報には高度な安全管理措置が求められている。
4.一部士協会の閉鎖的管理(公正取引:KOUSEI)
それらの特性を有する不動産情報を一部の士協会が閉鎖的に管理することは許されないものであり、独禁法に抵触する恐れさえ指摘されている。 調査の成果は、応分の負担(閲覧料)のもとに鑑定士が等しく受益を享受すべきものでもある。閉鎖的管理は許されないと知るべきである。 また2項との関連からも、広く社会に向けた開示の方向性を堅持するものでなければならない。
5.鑑定士の為に(鑑定士の協同利活用:KYOUDOU RIKATUYOU)
不動産取引情報は鑑定評価に欠かすことのできない基盤資料であることは云うまでもないが、不動産取引価格情報制度に関わる個々の事例調査は、地価公示スキームのなかで地価公示受託評価員(不動産鑑定士)が担当しており、その負担は重いものがある。この重い負担について軽減策や代価支払いについても検討されなければならない。
さらには改善された新スキームは、鑑定評価の精度を向上させ、鑑定士への社会的不信感を払拭させるものでなければならない。 それらの要請に応えるためには、新スキームの改善に止まるのではではなく、新しく不動産センサス(不動産取引悉皆調査)を創設する意気込みが鑑定士並びに鑑定協会に求められていると考える。
茫猿は不動産センサスの創設を提案しているが、不動産センサスの概要は次の通りである。
不動産センサス創設の理由
1.過去からの延長線上での新スキーム改善は、士協会既得権の要求を持続させる。
2.会員は新スキームに潜む根源的問題点を正しく認識していない傾向が認められるから、独禁法抵触の恐れ、個人情報保護法ガイドライン遵守、不動産取引情報開示の閣議決定、士協会管理権に正統性が無いこと 等に対応するために新しい制度創設が必要と考える。
不動産センサスの概要 《情報開示、情報共有》
1.(独禁法)一義的に地価公示利用であり、配分法を適用できるのは鑑定士のみである。
2.(独禁法)広く鑑定士に開示するが、調査負担と利用受益に相応する閲覧料を徴収する。 ※独禁法対応策はリーガルチェックが必須である。
3.(管理権)調査業務受託に際して、業務委託者と管理・利用契約を締結する。
4.(個保法)閲覧業務はオンライン閲覧に限定し、安全管理担保措置を強化する。
5.(情報開示)社会に向けて、情報開示と情報発信(公益事業、実勢路線価)を行う。
6.(財政等)事業主体と財政問題については、業務提携先の選択も検討する。
7.(閲覧料)問題点の解決並びにデジタル化は、閲覧と閲覧料の透明化を実現する。
8.(鑑定評価)二年後三年後に於ける、鑑定評価への寄与。
・閲覧収入等から、調査報酬の支払いが可能になる。
・地価公示事例カード2枚目の廃止。
・現行調査の負担を軽減:位置図作成の簡便化、距離要因の自動取得。
・近い将来には都計用途その他の要因を自動取得できるようになる。
・地理座標値の採用は事例分析のビジュアル化を実現する。
・他にも国土数値情報ダウンロードサービスの効果的利用。
Rea Reviewの創設 《情報開示、情報共有》
・依頼者のコンプライアンス、CSR(corporate social responsibility)に期待する。
・信頼回復、コンプライアンス強化、かんぽの宿問題対策になる。
・評価情報の共有は、評価上の閾値を形成する。
・鑑定評価への不信感を払拭することが、不動産センサスへの信頼感も醸し出す。
ただ今の鑑定協会が抱えている、新公益社団法人移行、連合会組織移行、鑑定ビジョン、かんぽの宿、証券化鑑定等々 多くの問題の根底に共通して存在するのは「鑑定士のコンプライアンス、倫理」の弱体化である。 それらを解決することが鑑定評価の信頼性向上と精度向上につながる。
不動産センサスとRea Reviewは、その有力な解決方法に為り得ると考える。 会員のコンプライアンスも倫理も、研修や通達のみで向上できるとは考えられないし、そのように考えることは問題の先送りにしかならない。研修や管理強化などではなく、具体的かつ有効な誘導策を早急に提示することが求められている。

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