独自収入源探し

H24年度末を迎えて、新スキーム改善検討も最終段階に進みつつあります。 事例利活用管理のオンライン閲覧開示、閲覧料の決定、閲覧データの収集管理方法等について理事会決定も間近となりつつあります。 並行して閲覧料の改訂・低額化に伴う、士協会財政の逼迫も改めて問題視されつつあります。

閲覧料の低廉化は士協会財政に与える影響が大きいことは当初から懸念されており、だからこそ士協会事務補助費と事例作成補助費を閲覧料収入より支給することも検討されてきた経緯があります。

ところで、新スキーム改善は当初から日鑑連集中管理と閲覧料の低廉化を目指したものである。士協会外会員についてはオンライン閲覧を否定し士協会事務局閲覧に限定はしたものの、閲覧料は指定口座からの引落などオンライン管理が目指されており、士協会の事務負担は軽減されており、士協会事務補助費支給の根拠は希薄である。 事例作成補助費についても、地価公示業務の一環として行われる事例作成であるから、作成補助費支給は根拠に乏しいのである。 だから士協会事務補助費と事例作成補助費は、事実上の小規模士協会支援対策費であると云えるものであり、都市圏域の大規模会が支給否認に転じたら消滅しかねない危うさを潜めている。《支援対策費を否認すれば閲覧料は、予定される額より半減し士協会外部閲覧会員にとっては朗報である。》

そこで、地方圏域小規模士協会の現場に位置する立場から、「取引現場に在るアドバンテージの活用」と「地方圏域士協会独自収入源」について考えてみたい。

少なからぬ地方圏域士協会が、いまさらに士協会の収入減少を云うけれど、収入が減少するならば、その対策は会費の値上げ、支出の削減、そして独自収入源の発掘が考えられる。 会費値上、支出削減はそれぞれの士協会自治に関わるものであるが、独自収入源については個々の士協会が単独に開発遂行するよりも、複数の士協会が共通する事業を共同運用するほうがその成果は大きかろうと考えるものでもある。 そこで、新スキームに関連して事例閲覧に附随する独自事業について考えてみたいのである。

NSDI-PTでは三次データについて、ジオコーデイングによる地理座標値《緯度・経度情報》の付加を、H24事業としてREA-NET《REA-MAP:3rd》にて構築中である。 しかし、この地理情報はジオコーデイング《アドレスマッチング》による付加であり、住居表示地区においても多少の誤差を伴うものであり、住居表示のないエリアでは大字単位で表示されてしまうのである。 そこで真正の座標値を確定する必要がある。

真正の座標値確定には、現地での確認と地図上における真正位置確認と確定という手作業が不可欠である。 事例地調査においては現地確認が不可欠であることから、現地確認を行う際に、事例地の写真をGPS内蔵カメラで撮影することにより、真正の座標値《緯度・経度》と現場写真を同時に入手しようというのである。 GPS内蔵カメラにて撮影・保存された現場写真にはそのプロパテイ情報として、撮影日時と座標値(緯度経度情報)が記録保存されているのである。

この事例地写真データに加えて、地形図情報を現場に位置するアドバンテージとして活用しようと云うのである。 地形図情報は一般的にA3ハードコピーで入手できるものであるが、これを縮小A4イメージデータとしてファイル化しようというのである。 イメージデータ(PDFやTIF等)ファイル化に際しては、地形図の下段に記載される所在地データをOCR読み取りで、ほぼ自動化並びに迅速化が可能である。

以上を整理すれば、三次データに関わる a.真正の座標値、b.現況写真、c.地形図データを三点セットとして、士協会事務局にて閲覧に供するのである。 この三点セット閲覧事業は士協会独自の事業であり、第三者が容喙するものではないし、閲覧者の便益向上にも大きく寄与するものであり、その便益と需要は大きかろうと考える。  なお、士協会会員については外部会員と同様に事務局閲覧とするか、データのDVD配布またはオンライン配布・閲覧というスタイルも考えられる。 並行して、閲覧収入から調査担当者へ資料整備費を支給することも検討できよう。

この三点セット資料整備事業は、さらに拡大することにより現場に在るという自らのアドバンテージを強化してゆけるものでもある。 例えば都計用途図、学区図、浸水冠水区域図、軟弱地盤図、土砂崩壊危険区域図等ハザードマップなどのデジタルマップ化整備が検討できようし、電子国土における開示情報も日毎に充実しているし、地方自治体における都市計画基盤図をはじめとして整備が進められている地理情報の利活用にも連繋するものであろう。

唯一の課題は、地方圏域士協会の「やる気」の有無であろう。 単独では人的にも資金的にも障害が多ければ、複数の士協会が共同してシステムを開発し共同運用して、情報整備を進めてゆこうという意欲の有無であろうと考えるのである。 そして、これらの事業遂行に関して日鑑連を頼ってはならないのである。 日鑑連を頼れば、それは即ち日鑑連事業であり「新スキーム」の二の舞となるだけであろう。  《 Heaven helps those who help themselves. 》なのである。

 

 

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独自収入源探し への2件のフィードバック

  1. 井東 孝行 のコメント:

    御説もっともと思います。GISが判っていればいるほど。
    利便性の観点からとは言え、果たしてそこまで必要なのでしょうか?
    立場が違えばいくらでも意見はありますが。
    フリーライダーをどう考えます?共生?都市鑑定士のための?
    情報は只-ロハ-では入りません。
    制度が出来たときの事例収集の苦労は?
    今は時代が違うから当たり前?
    これがローカル鑑定士の一般的な感情では?
    事例の現地踏査もしない鑑定士のためのデータ提供は不要では?
    3次データのみで十分。鑑定士なら後は自己判断で。
    鑑定士制度は制度疲労しています。原点回帰が必要です。
    正常価格自体意見合意できていないのでは?
    IFRSのヒエラルキーについても。レベル3はどう考えるのですか?
    詰められて回答できない、回避している人はしゃべらないこと。
    (コメントしている人を見ましたので、逃げて)
    外部の専門家の方が素直です。
    鑑定士不要論も時間の問題でしょうか?
    地理学の勉強もしない。GISも、空間分析も、勉強しない。
    鑑定士は要りませんよ。
    早くリタイアーかな?

  2. Nobuo Morishima のコメント:

    井東様 ご無沙汰しております。コメント有り難うございます。
    貴兄の論旨はとてもごもっともなことと考えます。
    小生は「Heaven helps those who help themselves」と考えます。
    Thoseは士協会のみを云うのではなく、鑑定士でもあると考えます。
    三次データというソース提供だけで十分であり、以後は自助努力であるべきという
    お考えも十分に理解できるものであり、そうあらねばならないと考えます。

    本記事は、士協会財政の疲弊を訴える方へ、一つの方法論を申し上げ、
    同時に士協会自らの資料整備の方向性も語ったつもりです。
    「地理学の勉強もしない。GISも、空間分析も、勉強しない。鑑定士は要りませんよ。」
     お説のとおりでしょう。
    同時に、資料整備は協働作業であり、結果の共有でもあるという考え方も
    捨てきれないのです。

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