士法への改正アンケート

【茫猿遠吠・・士法への改正アンケート・・04.06.03】
 茫猿が購読する「 PROGRES NEWS 」というメールマガジンがある。
PROGRESとは、以前にも紹介したことがある「Evalution」という不動産鑑定評価及びその周縁をテーマとする研究誌の発行主体でもある。この「プログレス・ニュース」の号外版が標題のアンケートを紹介している。


 アンケートの主体は「有限責任中間法人・産業再生研究会・士法改正連絡協議会本部」とあり、代表理事は平澤春樹氏である。茫猿は平澤氏に面識はないが、平澤氏は「Evalution」の三名の編集委員の一人であるとともに発行者でもある。
 メルマガ号外版の記事概要は次の通りである。
・「不動産の鑑定評価に関する法律」について、士法への改正について意向表明アンケートが(社)日本不動産鑑定協会関東甲信会で行われていること。
・私(平澤氏)たち不動産鑑定士市場賃料研究会としてもこれに全面的に賛同し、改正運動を盛り上げようと思っていること。
 そして、
・アンケートにより意向が表明されたからといって、ただちに法律的制度が変わるものではありませんので、腰を据えた1~2年に渡る活動が必要と思います。そのためには活動資金も組織も必要となりますので、私は私が代表理事となっている有限責任中間法人産業再生研究会を事務局とし、全国的な運動に取り組みたいと思います。『以上はメルマガの部分引用です。』
 アンケート募集の主旨並びにアンケート内容については、下記のURLを参照して下さい。主宰者が示す回答締め切り日は2004年6月10日です。
  http://www.progres-net.co.jp/news.html
 さて、アンケート趣旨説明の冒頭はADRに係わる代理権から説き起こしているが、主宰者が述べるようにADR代理権問題は単なる端緒であろう。不動産鑑定士に関わる法律が業法から士法へ変わらねばならないということは、茫猿も何度か『鄙からの発信』で述べてきたことであり、今もその考えに変わりはない。
 だから、茫猿はこのアンケートに対して早速に「概ね賛成」と応えておいたことである。 何故に概ね賛成なのかといえば、
・士法への改正に賛成か反対かと問われれば、賛成である。しかし、アンケートに示す改正案骨子とその補充アンケートに些かの疑問があるからである。
・改正案骨子並びに補充アンケートは、前記URLよりお読み頂きたいが、まず改正骨子案の5「すべての登録不動産鑑定士および鑑定法人は、仮称(社)日本不動産鑑定士協会に強制加盟する」という項目が釈然としないのである。
 全国単一組織するということは、ある種、歴史に逆行することではないのか、単位鑑定士会の連合会を目指すべきではないのかという疑問である。
 いま一つは社団法人が強制加盟(加入)を標榜することが可能なのであろうか、鑑定士資格を社団法人認定資格とすれば可能であろうが、多くの鑑定士にとっては、民間資格への変更など今さらに容認できることではなかろうと考えるからである。
 鑑定士法により設置されるところの、日本不動産鑑定士会並びに地域または都道府県単位の単位士会という組織があり、鑑定士たるものはこの両者に加入することにより、鑑定士登録を行うものとする。
 士法改正の目標はこれ以外にあり得ないと考えるのであるが如何であろうか。ことの成否、難易を云えば夢まぼろしと云われようとも、到達目標点は明らかにしておきたいものである。
 他にも疑問がある。当初の当該アンケート主体は関東甲信会であるという。ことの真偽は確かめていないが、関東甲信会という日本鑑定協会の下部組織でもある地域会が何を意図してこのようなアンケートを行っているのか。関東甲信会の役員会がどのような機関決定を行ったのか、行おうとしているのか、他の地域会との連携を企図したことが有るのか無いのか、全て疑問である。
 さらに補充アンケートについて云えば、「衣の下の鎧」がむき出しなのが、もっと疑問というか、釈然としないのである。
 補充アンケートは、統一候補支持、資金カンパ、役員立候補という文言が並んでいる。まさしく次期選挙準備と捉えられても仕方のないところである。
次期協会役員選挙は05/03に予定されており、その準備に取り組む時期がぼちぼち近づいていることは理解できる。 しかし、士法への改正運動と選挙活動とは一線を画すのか、一体のものとするのかを明らかにして、このような運動は始めるべきではなかろうか。
 当然のことであるが、士法への改正などというものは、現在の公式組織である(社)日本不動産鑑定協会が全会一丸となって取り組まねば、とてもとてもことの成就はおぼつかないことである。だから、そのことを目標とする会長はじめ大多数の理事役員でもって、協会執行部が構成されなければならないことも理解できるというよりも、運動のための必須条件であろう。
 結局のところ、「業法から士法へ」という目標を掲げて、会長選挙にあるいは副会長や理事選挙に立候補する鑑定士を捜しているのか、あるいは既に何人かの候補者はいるのか、何より横須賀現会長の意向は奈辺に在るのか。この辺りがよく判らないのである。
 壮図は佳しとする。がしかし、戦略的・戦術的に釈然としないのである。
 不動産鑑定評価に関する法律が公布されたのはS38.7.16である。以来、40年余を経過するに、法52条に予定する全都道府県の社団組織についても、法55条に規定する農地等評価に関する除外事項の改正についても、衆参両議院の附帯決議が厳に存在するにも関わらず、未だ全単位会組織未成立並びに法改正未了である。
 この一事をもってしても、法改正は難事であると云えようし、逆に云えば多くの鑑定士はそれを望んでこなかったとも云えるのである。
 鑑定士が鑑定評価離れを起こしているともいわれる。若手鑑定士の相当数は鑑定士資格を得ても鑑定評価に従事しようとしないとも聞く。何よりも鑑定士の協会離れが進んでいるのでなかろうか。
 断っておきますが、茫猿はこの運動の挫折を願うものではありません。業法から士法への改正は茫猿も願うところであり、微力ながらこの運動を応援したいと考えています。 だからこそ、誤解など受けることのないように、些事で足をすくわれることの無いように、大義を掲げて王道を歩む運動を着実に進めて頂きたいと願うものです。
 『鄙からの発信』読者諸氏も、アンケートに答えて頂きたいものです。
ここまで述べてきたことは、大事の前の些事です。現鑑定協会会員であろうと無かろうと、鑑定士であろうと無かろうと、鑑定評価に関わる者として、鑑定士がどのようなポジションに立たねばならないかという、その一点からアンケートに答えることが、アンケートを提起した人々を大きく勇気づけるものとなるでしょう。
 アンケート回答用紙は、下記サイトから印刷できます。
PDFファイルですが、ダウンロードはできないようです。
ファイルを開いて印刷を行ってみて下さい。
  http://www.progres-net.co.jp/news.html

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