土地センサス事業実施の提案

鑑定協会で土地センサス事業を実施したら如何でしょう。前項「鑑定士の勘違い」で、指摘しましたように私達不動産鑑定士は、ややもすると価格の判明した取引事例を重視しがちです。しかし、価格の判明した取引事例を調査するためには、最初に取引発生の有無を調査します。その後、取引の当事者や仲介者等に様々な手法でアプローチして取引価格の詳細解明に努力します。ところが、地価公示をはじめとして、この取引価格が判明した資料はデータとして保存しますが、解明に失敗した資料は、多くの場合保存されません。


しかし、価格の記載された事例資料(価格資料)と同様に、時にはそれ以上に重要なのが取引発生を示す資料(取引資料)です。この取引資料を全数調査しデータファイル化することは、昨今のコンピュータ化の進展とデータベースソフトの能力向上からすれば、さほど困難ではありません。以前は国土法監視区域指定の一環としての「監視区域詳細調査の内、土地取引状況調査」があり、全数調査としての個別土地取引状況調査が国土庁において実施されていました。現在の実施状況を確認していませんが、この調査を鑑定協会の事業として実施することが必要だと考えます。個別土地取引状況調査はいわば土地センサスであり、この取引資料を基礎として、価格資料の解明に向かうべきだと考えます。
同時に、個別土地取引状況調査の事業主体としては、公益法人たる不動産の専門家集団である(社)日本不動産鑑定協会が最も相応しいと考えます。土地問題を解明するには、先ずその基礎として土地の実態が解明されねばなりません。静態的なデータは自治体税務課等で把握できるでしょう。しかし、取引価格を含めた動態的実態の解明は、公的評価の実施主体である鑑定協会が最も相応しく、且つその能力を備えるものと考えます。
関係機関の理解や守秘義務の保持など越えねばならないハードルは存在しますが、既に先行して実施される単位組織も複数存在すると仄聞します。先ずは価格資料の前段である「取引資料」のデータファイル化を事業化しましょう。そして取引動態を分析解明し、社会に発信すれば、公益にも大いに資するものと考えます。
さらには、鑑定協会が調査研究機関でもあることの証ともなり、同時に私達の鑑定評価書の精度と信頼性を大幅に向上させるものと信じます。
センサス(英census)
1 人口調査。国勢調査。
2 特定の社会事象につき、特定時点に一斉に行う全数調査。「農林業センサス」「工業センサス」など。
国語大辞典(新装版)小学館 より

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