INDEX事業試案

資料委員会内に設けられているインデックス専門委員会への提案骨子を
公開します。御批判や御意見を歓迎します。
 不動産インデックス就中、賃料インデックス作成事業を検討する上で、
「賃貸資料悉皆調査事業の実施」を目標とする資料収集事業を提案致し
ます。
鑑定評価の基盤をより強固にするという主旨から、三価格試算基礎資料
として「取引資料、賃貸資料、建設造成資料」の三資料を恒常的に収集
し整理する事業の一環として、提案するものです。
 一般に事例資料と云う場合には、取引価格や成約賃料や建築費が判明
しているものを指して云います。しかし、取引事例についても、全ての
事例について必ずしも取引価格が判明している必要はなく、取引の対象
不動産と取引当事者と取引時点が把握できておればよいのであり、取引
価格は必要に応じて追加調査を行えば事足りるという側面があります。
 勿論、価格が把握できているに越したことはありません。しかし、価
格が把握できていないからと云って無意味なデータだとは考えないので
す。
 それよりも、一定の圏域の全取引を把握していることが肝要であり、
その全てがデータファイル化されていることが重要だと考えるからです。
その結果、取引の件数、面積、当事者の属性等について時系列的な分析
が可能になり、マクロ的な取引動態分析が可能だと考えるのです。さら
に全数把握ができていれば、統計的処理により取引総額的な動態分析も
可能ではないかと考えています。
同様に賃貸事例の体系的把握を目標とする場合にも、賃貸資料の把握か
ら始めるべきではと考えるものです。
 賃貸資料データファイルの全容は次の様に考えます。
その全てを直ちに実行しようと提案するものではありません。取り敢え
ず着手可能なところから始めればよいと考えます。しかし、事業着手当
初から将来目標を設定して、全体のフレームを構成するのと、そうでな
ないのとでは、後々において大きな差異が生じると懸念するものです。
一、賃貸資料悉皆調査ファイルの作成
 データファイルとしては、国土庁・地価公示間接法賃貸事例フォーマッ
トに準拠して作成すべきと考えます。地価公示や地価調査その他にデー
タコンバートする為にも共通フォーマット準拠は欠かせないと考えます。
 又、国土庁フォーマットに追加すべきデータとしては、建物面積デー
タ(登記面積と施工面積)や賃貸ビル取引結果データの他に、ビルオーナー
データや賃借人データを保持する必要があると考えます。この賃借人デー
タは空室率や回転率を把握する基礎資料となると同時に、賃料等賃借条
件の照会調査に活用できると考えます。又、経年毎の追跡調査によって、
賃料動向も把握できます。
 将来的な課題になるかとは存じますが、ビルのデジタル写真や設計関
連図面等のイメージデータとのリンクフィールドも用意しておくべきと
考えます。
 同時に、メンテナンスの容易さを考えれば、賃貸データファイルとイ
ンデックス作成モデル並びに取引データファイルは分割管理すべきと考
えます。
二、賃貸物件の悉皆調査
 ある圏域(市区町村単位)毎に、賃貸物件の悉皆調査を行います。
居住用並びに商業用・事業用全てを網羅することが望ましいが、当初は
築後5年ないしは10年以内の商業用賃貸ビルの悉皆調査を行うことか
ら始める。
※例えば、◎○市・商業地域(容積500%以上の地域)で築後5年以内の
賃貸建物を対象とし、調査入力する。等々
※賃貸ビル悉皆調査の原始資料としては、建築確認申請書・住宅地図等
が利用できると考えます。対象賃貸建物及び敷地の属性データは登記
事項を閲覧することにより把握できると考えます。尚、テナント名も
調査対象としデータ入力する。
※商業地公示地の設定区分区域内の、賃貸ビル調査を評価員が行い、統
一ファイルに入力した上で、統合するという方法も考えられます。
照会アンケート発送は単位会事務局が行うことになるでしょう。この辺
りの課題は、単位面積当たりに占める賃貸ビルの割合が地方圏と都市
圏では随分と異なるので、一律に論じることはできないと考えます。
三、賃貸事例の照会調査
 宅建業界との提携・委託調査の可能性を探ると同時に、ビルオーナー
並びにテナントへの郵送照会調査を行う。募集広告等も入手できれば資
料として採用する。面接調査も特段のコネクションがあれば可能である
が、当面は人的にも経費的にも困難と考える。
四、当面の事業期間と予算措置
 この事業が単年度において完成可能なわけはなく、数年度の継続事業
となると考えます。数年間に亘る悉皆調査が完成すれば、以後は補充調
査で事足りる訳であり、同時に賃貸条件の充足により傾注できると考え
ます。予算的には、各単位会で予算計上できればよいが、予算に余裕が
ある会は少ないと考えます。したがって、国土庁が計上するインデック
ス予算を土台として、地価公示委託費の一部を単位会にてプールするこ
とにより捻出するしかないと考えます。
 当然に異論がでると予想されますが、鑑定評価の今後を考えれば、足
腰を強くし基盤を高めるという観点から理解を求めるほかはないと考え
ます。その意味からは、着手可能な会から始めると云うことも考えてお
く必要があると思います。
 結果的には、当面国土庁予算の範囲に限定されるのかもしれません。
つまり大半は地価公示評価員の手弁当ということになるのでしょう。
 どのように予算的裏付けをつけるか、或いはデータ公開による事業収
益に結びつけるかは各単位会の努力となるのかもしれません。
五、事業主体
 各単位会が事業主体となるものであると考えます。組織的には地価調
査委員会所管か、資料委員会所管かは単位会が決めることと考えます。
それらを母体とするプロジェクトチーム編成も考えられるでしょう。
本会所管担当業務としては、
a.統一フォーマットによるデータファイルソフトの作成斡旋、
b.アンケートの雛形作成、
c.インデックス作成モデルの検討作成、
d.予想される国土庁インデックス調査との整合性維持、
e.法務局閲覧調査の便宜供与(公用閲覧申請書の確保)
f.各単位会データを集約して、インデックス全国版作成
g.全国的に実施が可能となるべく、督励並びに支援、
h.固評業務や相続税評価業務との関連からの支援策検討。
等が考えられます。
六、その他
 不動産インデックスは、この基礎調査が充実すれば自ずと作成が可能
になるものであり、同時に基礎調査の充実こそがインデックスの信頼性
を高めるものと考えますが、如何でしょうか。
 賃貸資料悉皆調査の端緒ともいうべき事業は、東京会に既にあり、静
岡会にても類似調査が実施されています。岐阜会においてもパイロット
事業としての実施が検討されつつあります。
都市圏においては賃貸資料も有償にて配賦する業者が既に存在していま
すが、地方圏では対価を支払ってこれらの資料を購う事業所等が少ない
ことから、まとまった資料として市場に存在していません。だからこそ
単位会が自らの為にも、市場の為にもこの事業を実施する意味があると
考えます。
 入手可能な資料からデータファイル化するという考え方も当然にある
わけですが、長期的視野にたてば悉皆調査こそが望ましいものであり、
一見迂遠に見える調査事業ですが、結果として大きな成果を得ることが
可能だと考えます。
七、終わりに
 さらには一過性の側面を持つ取引事例と異なり、継続性という特性を
有する賃貸事例等であるだけに、これら調査結果を地図情報化すること
により、公的評価結果データや取引資料データと合わせて一元管理すれ
ば、都市情報的なデータベースを構築できるものと考えます。
 勿論、取引資料と賃貸資料という足場を充実すれば、鑑定士の存在感
や信頼性はさらに強固なものになるだろうと考えます。
 この件に関しては、鑑定評価というものが置かれている現状を、どの
ように認識するかに全てが懸かっていると考えます。官庁も社会一般も
必要性を認め、作成・公表を求めているのに、我々が背中を向けてしま
えば、その結果としてもたらされるものも、自己責任結果ということに
なるのではないでしょうか。
 その意味からは、全国一斉調査にあまり拘ることはないと考えます。
国土庁のインデックス調査の仕様にもよりますが、できるとことから始
めて、ソフトの練度を高め、ノウハウを蓄積して頂き、それを基にして
全国展開を考えるという在り方も視野に入れておくべきと考えます。
 国土庁が付けたこの事業関連の予算は、確か総額8千万円と聞いてお
ります。勿論、全額が鑑定協会宛に委託振り向けられるのではなく、土
地総研宛の部分等もあるでしょう。
 しかし、これを呼び水として、好機として追い風に使い、当該事業を
早く作業日程に載せたいものと考えます。

関連の記事


カテゴリー: 不動産鑑定 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください